はじめに
企業にとって、いまやICT(情報通信技術)の活用は、必要不可欠なものとなっています。その一方で、インターネットの利用にともない、プライバシー侵害や名誉毀損、コンピュータウイルスの感染や不正アクセスによる情報漏えいなど、人権侵害の危険性が増大し、企業が個人や社会の安全を脅かす問題も広がってきました。
社会の一員である企業にとって、お客様や社員をはじめ、多くの人々の人権を守ることは、重要な責務であることはいうまでもありません。企業が、ICTを活用しつつ、そうした社会的責任を果たすためには、組織として「情報モラル」を確立することが求められているのです。
経営者の皆さんは、組織として人権を守り、情報モラルを確立することが重要な経営課題だということを、しっかり理解していただく必要があります。
また、お客様や社員にかかわる情報を扱う部門の管理者や現場の担当者の皆さんは、人権を守り、情報モラルを尊重することが大事な仕事のひとつだということを十分理解したうえで、日々の業務にたずさわっていただくことが重要です。
情報モラルとは?
情報社会において、企業が顧客や社員の人権を守るためには、情報の特徴や重要性を再認識する必要があります。「情報モラル」とは、企業が情報を扱う上で求められる考え方と行動を指し、特に個人の尊重、安全、社会的公正に配慮した考え方と態度、行動が求められます。
人権尊重のための情報モラル
安全への配慮
・個人情報保護
・情報セキュリティ
個人の尊重
・人格の尊重
・プライバシー
・名誉・信用
・表現の自由
社会的公正への配慮
・消費者保護
・情報アクセシビリティ
・知的財産権
企業が情報を取り扱う際に求められる考え方と行動
安全への配慮
情報にかかわる安全への配慮とは、情報漏えい、コンピュータウイルス、不正アクセス、情報の改ざん、なりすまし、誤操作、システム障害、データの間違いなどに対する情報セキュリティ対策を徹底することです。
具体的には、セキュリティ意識の啓発やセキュリティシステムの活用など、セキュリティリスクに対する組織的予防策と、事故が起きてしまった場合の被害拡大防止、業務復旧、再発防止、損害補償、信頼回復などの事後対応策の実施が求められます。
個人の尊重
情報にかかわる個人の尊重とは、表現の自由、個人の名誉や信用、プライバシーなどの人格権を尊重することです。 具体的には、企業が顧客や社員の個人情報を扱う際には、プライバシー侵害を引き起こさないよう、情報の収集、利用、保管にあたって、本人の意思を尊重し、適切な管理を行う必要があります。
また、企業のホームページや社内ネットワークにおいては、他者のプライバシーを侵したり、名誉や信用を傷つけたり、差別や偏見を助長しない配慮が求められます。
社会的公正への配慮
社会的公正への配慮とは、消費者・取引先との取引や、著作物などの情報の利用において、適法・適正で、他者の権利・利益を尊重した情報の提供や利用に取り組むことです。
具体的には、電子商取引では、誇大広告や不正取引をしない、必要な情報を漏れなく開示し、分かりやすく説明するなど、消費者の権利の尊重が求められます。
情報アクセシビリティの確立では、高齢者や障害のある人を含む全ての人の知る権利を尊重し、必要な情報に、誰もが使いやすい形でアクセスできるようにすることが求められます。
知的財産権保護では、著作権、工業所有権、営業秘密などにかかわる情報を扱う際に、無断での複写や不正な利用をしないよう、他人の権利を尊重した公正な利用が求められます。障害者も含めた全ての人への情報アクセシビリティへの配慮など、他者の権利・利益を尊重した情報提供や利用に取り組むことです。